2019年度第3回研究会:地上の天と頭上の天:ピューリタン起源のダブルヴィジョン

日時:2020年2月19日(水)18:30-20:30 

講師:佐藤光重(成城大学文芸学部)

成蹊大学6号館601B教室

講師紹介:成城大学文芸学部准教授。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学後、博士(文学)取得。専門は、アメリカ植民地時代の文学、およびヘンリー・ソローの文学。著書に『「ウォールデン」入門講義』(金星堂、2019年)、共訳書にテリー・テンペスト・ウィリアムス『大地の時間-アメリカの国立公園、わが心の地形図』(彩流社、2019年)、共著に『物語のゆらめき―アメリカン・ナラティヴの意識史』(南雲堂、1998年)、『ソローとアメリカ精神―米文学の源流を求めて』(金星堂、2012年)など。

本基盤研究(B)はメイフラワー・コンパクトが内包していた「排除/包括の理論」をさぐることによって、環大西洋文化を再定位し、アメリカ中心に進んできたグローバリゼーションの向かう方向を、環太平洋的視座も連動させつつ見定めることを目的としている。

十七世紀に新大陸にやってきたピューリタンにとっての宿命は、故郷喪失、個人化、革命の三つであるとされている。弾圧により故郷を追われ、郷土を離れて一人の個人となり、利害関係を同じくする人らとピューリタンは契約を結ぶ。ここに近代的な個人の誕生と契約社会の発端があるとも言われる。やがて信者の共同体は、新天地を樹立するか(植民地建設)、政府を転覆するか(ピューリタン革命)の選択に迫られる。

メイフラワー・コンパクトもまたしかり。ピルグリムたちは故郷へは帰れない。生きることは天国へ召されるまでの試練の旅路であり、彼らの聖地は地上にはないはずであった。「神の國は汝らの中に在るなり」(ルカ伝17.20-21)とあるように、神の国とは心の在り方を本来は指す。だがメイフラワー・コンパクトのひとつの宿命とは、本来なら見えないはずである神の国を地上の見える共同体樹立へと便宜的に置き換えていることである。見える聖徒、聖化と義認、業と恩恵の契約、予型と原型といったピューリタンの用語にも、この「見える・見えない」の二重性が伴う。このことはひいては後の時代に、本来は見えないはずの運命を「明白な運命」と呼ぶことにも連なってゆく。本発表では、アメリカ文学におけるこの二重性の問題をピューリタンおよびヘンリー・ソローを題材にして考えてゆきたい。

研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学)

研究分担者:巽孝之(慶應義塾大学)・舌津智之(立教大学)・日比野啓(成蹊大学)

どなたも歓迎ですが、会場整理の都合上、hibinoあっとまーくfh.seikei.ac.jpに前日までにご連絡ください。

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