1995年

フレッシュマン・セミナー C <通年>

■授業の概要

[アメリカ文化を読む]
アメリカという文化はことばによって成立しているとも言える。アメリカ人が、ことばに出して表現することに異常な情熱をかけているわけを考えてみたい。レストラン、道路、銀行、公共の広場等、アメリカ生活の中で日常見かけるフレーズを読み解きながら、その背後にあるメッセージや価値観を考えてみたい。
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■テキスト

M. Formm 他、 American Signs Speak (Macmillan)

 
 
演習 Ⅰ・ⅡO <通年>
■授業の概要

[19 世紀アメリカ文学と白い膚/黒い膚]
 奴隷制が制度として行われていた19世紀アメリカ社会では、主人/奴隷という対比は、白人/黒人という人種的差異と正確に対応していたかのように思えるかもしれない。しかし、時として、このハイアラキーが逆転する状況が出現する。ハーマン・メルヴィルの『ベニト・セレーノ』では、奴隷輸送中の船の上での反乱が描かれ、主人(白人)/奴隷(黒人)の位置が不気味に入れ換わった世界が描かれている。また、マーク・トゥエインの『プドゥンヘッド・ウィルソン』では、白人の赤子と黒人の血が混じった赤子の取り替えがプロットとなっている。
 見た目には区別のつかない二人の子供が、入れ代わったまま成長していく様子を見ていると、白人/黒人という差異が外見上消滅してしまっていることに、読者の側は不安を覚えてくる。黒人に対する差異は、人々が普通考えているように、膚という目に見える指標によってはっきり行い得るものであろうか。白/黒という「外なる差異」を作り出すために、黒の中の白や、白の中の黒といった「内なる差異」が巧妙に操作されて、根深い差異を生み出してきたのではあるまいか。白人にとっても黒人にとっても自己のアイデンティティにかかわる人種の問題を、19世紀アメリカ社会の中で考えてみたい。
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■テキスト
Herman melville, Benito Cereno (Library of America)
Mark Twain, Pudd’nhead Wilson (Penguin Classics)

 
 
演習 Ⅰ・ⅡP <通年>

■授業の概要

[ことばが作るアメリカ]
 アメリカは新大陸にやってきた人々が、「荒野」を切り開き「文明」と呼ばれる空間を広げつつ建設した国家である。そのため、自らの行為や国家の使命について、アメリカ独自の物語が、アメリカ独立のレトリックで語られてきた。ことばによってアメリカを表出する要請がアメリカを作ってきたと言えよう。トマス・ジェファソンらがアメリカの理念を表明した「独立宣言」をテクストとして分析することから始め、作家たちの作品の中で「アメリカ」という記号が現実を指し示すためにはどのように使われてきたかをたどってみたい。ことに 1993 年に出版された『X のアーチ』は、SF 的メタフィクションの形態を取りながら、建国の父ジェファソンの新しい像を提示している。
 ”All men are created equal.” と書いたジェファソンが、黒人女性奴隷サリーを愛人としていた事実を、このテクストはいかに歴史化していくのか。その黒人女性サリーの口からもれた「アメリカ」という一語は何を指しているのであろうか。

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■テキスト

Thomas Jefferson, Declaration of Independence
Thomas Pain, Common Sense (Penguin Classics)
Steve Erickson, Arc d’X (Poseidon Press)

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文学理論  <通年> 

■授業の概要

 文学をとりまく様々な問題を取り上げて、英米文学への取り組み方を紹介する。我々は文学を論じるのに、作中人物の行動や話の筋にだけ目をうばわれがちである。しかし、それを書いている作家の動機、作家にそれを書かせた社会の要請、それを読む読者の側の反応といった側面に目を移していくと、「文学をするという行為」が立体的に見えてくる。文学作品というテクストを歴史や社会というコンテクストに置いて考えてみたい。記号としての言語、歴史的事実と文学、精神分析と言語、経済活動と文学、性差(男と女)等、現代批評が問題とする項目をとりあげて解説していく。
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■授業の計画

前期: Ⅰ ロシア・フォルマリズム
    Ⅱ 読者反応理論
    Ⅲ ナラトロジー  後期: Ⅰ 精神分析批評
    Ⅱ 記号論
    Ⅲ 新歴史主義 

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