1998年

フレッシュマン・セミナー C <通年>

■授業の概要

[アメリカ文化を見る・聴く・読む]
 アメリカ文化は「言葉」から成立していると言える。テープ(音声)・ヴィデオ(画像)を用いてアメリカの風景や情景にふれ、そこで発せられる数々のフレーズを読み解きながら、アメリカ人の「言葉」に対する情熱を考えてみたい。
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■テキスト/参考文献

S. K. Kitao 他 Traveling and Living in the U. S. (朝日出版)
R. Hernandez, Reaching for the Stars Ⅱ(英潮社)

 
 
演習 Ⅰ・ⅡM <通年>
■授業の概要

[黒人女性作家のテクストと声] 『カラー・パープル』研究

 アリス・ウォーカーの『カラー・パープル』は、黒人女性ヒロインが精神的、経済的に自立していく物語である。スピルバーグによって映画化されたこともあり、黒人女性作家が書いたこの作品は、このように読まれることが多い。確かに、このテクストが愛と勇気の物語であることは認めるにしても、そこには、黒人女性たちの魂の目覚めを伝えるための様々なからくりが仕組まれていることも見逃してはならない。書簡体という形式を取っていること。セリーが言語習得する過程として読めること。アフリカとアメリカとの関係を再考させること。愛というクリシェに、異性愛だけでなく、同姓愛も込められていること等々。
 筋書きを追うだけでなく、言葉やレトリックに気を配りながら読み進め、自分なりのテーマを見出していける人の参加を期待します。テクストを精読し、そこから聞こえてくる声を聞き取り、作家としてのアリス・ウォーカーの果たす役割を考察するとともに、黒人文学と現代批評との関係についての論文も読んでいく。
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■テキスト
Alice Walker, The Color Purple (Pocket Books, 1982)

 
 
演習 Ⅰ・ⅡN <通年>

■授業の概要

[歴史と読みの政治性]『ビリー・バッド』研究

 「空のように青い目をした」美男水夫ビリーは、反乱を企てているという言われのない告発にあい、申し開きの言葉を発することが出来ず、告発者を殴り殺してしまう。ビリーの行為は、善悪の基準をどこに置くかによって違った解釈をされ、有罪/無罪の二項対立はテクストの中で二転、三転していく。ビリーを裁くヴィア船長の判決、ビリーの絞首刑の場面をキリストの昇天になぞらえて描くメルヴィルの書き方、バラッドとしてビリーの思い出を歌い継ぐ仲間の水夫たち、後世に残されたビリーの事件の公文文書等々。
 一つの事件を歴史化するのに、このようにいくつものヴァージョンがあることを認めることにより、テクストの持つ政治性について考える。また、誰の立場に立って読むかを左右するコンパッション (compassion) という概念も重要なテーマである。バーバラ・ジョンソンやハンナ・アレントの論考を読み、現代批評理論を作品分析において実践していきたい。
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■テキスト

Herman Melville, Billy Budd, Sailor (The University of Chicago Press, 1962)

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