1994年

演習 Ⅰ・ⅡP <通年>
■授業の概要

[テクストのもつ「センチメンタルパワー」]
 Uncle Tom’s Cabin (Harriet B. Stowe 1852) は 19 世紀に百万部売れた唯一の本である。黒人を主人公にした物語を掲示することで、この本は南北戦争前夜のアメリカの世論を形成したと言われているが、最近では、テクストが社会を動かす力を発揮した例として注目を集めている。なぜこの本は当時これほど売れたのか?この時代の読者が、テクストを通して文化の根底に流れていたセンチメンタルな感性を共有しあい、そこから一つの世界観を作っていたからである。
 「家族の愛の物語」として感傷的なテクストが、社会の様相を映し取るだけでなく、19 世紀のUncle Tom’s Cabin を検証する一方、昨年発行されて、既にアメリカで四百万部売れたという The Bridges of Madison County を読み、現代社会とテクストとの関係を考えてみたい。このメロドラマ的作品が現代文化に受容されていく現状(書評、ラジオドラマ、映画化)を調べ、Uncle Tom’s Cabin の場合と比較してみたい。
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■テキスト/参考文献
Harriet B. Stowe, Uncle Tom’s Cabin (Vintage Books/The Library of America)
Robert J. Waller, The Bridges of Madison County (A Mandarin Paperback)
Jane Tompkins, Sensational Designs : The Cultural Work of American Fiction 1790-1860 (Oxford Univ. Press)
Gillan Brown, Domestic Individualism : Imagining Self in Nineteenth Century America (Univ. of California Press)

 
 
演習 Ⅰ・ⅡQ <通年>

■授業の概要

[アメリカ・女・資本主義]
 The Awakening(『めざめ』)は 1899 年に出版されたが、ひとりの女性の意識の目覚めを、性への目覚めと重ねて描いたためか、散々な非難を浴びせられ、長いこと忘れられていた。1960 年代に入り、フェミニズム運動の盛り上がりとともに、この作品の再評価がおこり、今日ではフェミニズムのコースの必読書になった。
 最近までは、主として女性の意識の自立という視点から読まれたようであるが、ヒロインの原動を 19 世紀末のアメリカ社会の中に置いて見直してみると、別の読み方もできるのではあるまいか。20 世紀初めにかけてアメリカ社会は大きく変動したが、変化を推進した最も大きい要因は、資本主義体制が急激に発展したことである。自分の労働を金銭と交換するために外へ働きに出る男/夫と、家庭に残って消費の役を与えられた女/妻との分業が、特別の意味合いを持ち始めるのもこの時期である。
 作中人物エドナは、南部のウォール街と呼ばれたニューオーリンズで、手広くビジネスを営む企業家の夫と裕福な暮らしをしている。資本主義体制の中で利潤追求にあけくれる企業家の妻という立場が、女性の意識にどのような影響を与えているかを考えながら、資本主義と所有という問題に立ち入ってみたい。
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■テキスト/参考文献

Kate Chopin, The Awakening (A Norton Critical Edition)
Charlotte P. Gilman, Women and Economics : The Economic Factor Between Men and Women
 As a Factor in Social Evolution (Harper Torchbooks)
Wendy Martin ed., New Essays on the Awakening (Cambridge UP)
Thorstein Beblen, The Theory of the Leisure Class (The Macmillan Company)
T. ヴェブレン『有閑階級理論』(河出書房)
富島美子『女がうつる』(頸草書房)

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基礎演習  <通年> 

■授業の概要

 [オィディプス神話と文学批評入門]
  オィディプス王の物語は、先王殺しの犯人をつきとめる、一種のミステリー仕立てになっている。事の次第が明らかになったとき、オィディプス王は、人間に根源的にそなわった二つの罪—父親殺しと近親相姦—が、自分の中にあったことを知らされる。この物語は、フロイトが自説を解説するための用語として用いたのを始めとして多くの文学者の想像力を刺激してきた。
 戯曲『オイディプス王』を精読して、人の心の謎、家族関係の中に潜む闇などを考察する。その後、この物語が精神分析、記号論など現代批評にいかに応用され、取り入られているかを見てみたい。その上で、アメリカ、イギリス、日本の文学作品をオィディプス的見地から分析し、一方現代文学(映画、アニメ、コミック、ドラマ等)の中のオィディプス的要素をさぐってみる。
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■テキスト

Sophocles, Oedipus Tyrannus (英光社)

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