2002年

アメリカ文学史  <通年> 

■授業の概要

 アメリカ合衆国の文化の特質を、様々なテクストから読み解いていく。15世紀ヨーロッパにおいて、新大陸としてのアメリカがどのような意味を持っていたかについて探る事から始め、17、18世紀の植民地時代の精神的背景、1776年の独立革命の与えた衝撃、19世紀アメリカ国家の発展時の精神的高揚等を、文学作品からたどる。また、こうした流れの中で、アメリカ人たちが自国のアイデンティティをどのように表現してきたかを考えていく。その上で、20世紀アメリカの世界制覇の文化的意味を探り、21世紀のアメリカの存在の意味と世界のあり方を検討したい。
 また、文学史という概念そのものに対する批評理論も紹介する。ことに、歴史と記憶との問題については、最近の精神医学の問題提起などを批評書から汲み取って、歴史言説のあり方に対しての感覚を養ってほしい。
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■授業の計画

前期: 15世紀ヨーロッパにおける新大陸の意味
     植民地時代のテクスト
     独立革命とアメリカ精神
     アメリカ文学の独立
     アメリカ・ルネサンス
     南北戦争と文学 後期: 19世紀後半の文学と文化
     自然主義文学
     世紀の変わり目の社会      
     1920年代の文学と文化
     第二次世界大戦の歴史の概念
     ユダヤ系文学
     黒人文学
     アメリカ的リアリズムの本質

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■授業方法

講義が中心であるが、ビデオなどによって視聴覚的にアメリカ文化に触れてほしい。また、インターネットによる情報収集(ことに英語で)にも慣れてもらいたい。指定された批評書3冊のうち、1冊を購入して読み、レポートを提出すること。初回の授業で3冊の本の概要については説明するので、興味のあるものを選ぶこと。
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■テキスト/参考文献

Peter B. High, An Outline of American Literature (Longman Eicho-sha)
『記憶を書きかえる:多重人格と心のメカニズム』イアン・ハッキング(早川書房)
『歴史とトラウマ:記憶と忘却のメカニズム』下河辺美知子(作品社)
『記憶のポリティックス:アメリカ文学における忘却と想起』松本昇他(南雲堂フェニックス)

 
 
フレッシュマン・セミナー A <通年>

■授業の概要

[カルチュラル・スタディ入門]
 文化の差異を学ぶことは、日本人としての自分の位置を探ることでもある。21世紀の世界で持ち上がってくる問題を、日常的なものから国際的なものまで取り上げて、自分の視点を探すための準備をしてほしい。文化を論じる方法をいくつか紹介し、具体例を英文のテクストで分析していく。
 また、英語そのものをきちんと読み解く基礎力をつけるために、辞書の引き方、文献の検索法、きちんとした発音、そして、インターネットによる情報収集力も訓練したい。

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■テキスト

C.Duppenthaler, N. Ohta, Vital Issues in America (Macmillan Languagehouse )
M. Asama, C. Sloss, Face It! The Times, They are Definitely Changing, (Nan’un-do)

 
 
演習 Ⅰ・ⅡM <通年>

■授業の概要

[奴隷制と自伝の言説]
 人間として自己の人生を所有することさえ許されなかった奴隷制下の黒人が、自己を語る言葉をいかにして獲得していったかについて考える。19世紀半ば、男性黒人奴隷と女性黒人奴隷とによって書かれた二つの自伝を読み比べたい。
 Frederick Douglass は「なぜ自分は奴隷なのか」という問いから、奴隷としての自分の立場に目覚め、自由への逃亡を企てる。一方、Harriet A. Jacobs にとって、逃亡は子供の自由を守るためのものであったが、彼女の記録は長いことまがい物として信用されずにきた。黒人奴隷が言葉を得ることの意味、自己を語ることの困難、gender の差異、アメリカ社会の slave narrative の受容などを、19 世紀のアメリカの歴史と絡めて検討していく。
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■テキスト

Frederick Douglass, Narrative of the Life of Frederick Douglass (Penguin)
Harriet A. Jacobs, Incidents in the Life of a Slave Girl (Harvard University Press)

 
 
演習 Ⅰ・ⅡN <通年>

■授業の概要

[ホロコーストを語る言語の可能性]
 アウシュビッツの後には沈黙しかないと言われたホロコーストは、六百万人のユダヤ人を殺した出来事である。証言の不可能性をせまるこの事件を語るとき、文学はどのような役割を果たせるであろうか?
 スタイロンの「ソフィの選択」は、アメリカ文学がホロコーストの記憶をテクスト化した一例である。ポーランド女性ソフィが収容所で迫られた選択は、娘を取るか、息子を取るかというものであった。とっさに態度を取らねばならなかったこの過酷な選択が、後になって彼女にもたらす記憶の重み、その彼女の記憶を作者の分身スティンゴが回想する意味などを、アメリカ社会におけるホロコーストの言説として検証していく。
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■テキスト

Willam Styron, Sophie’s Choice (Bantam Book, 1979)

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