2008年

アメリカ文学史  <通年> 

■授業の概要

 文学は、言葉によって社会の様相をテクストの中に再現する行為であり装置である。アメリカ合衆国の文化と社会の流れを、様々なテクストから読み解いていく。
 15世紀ヨーロッパにとって、新大陸としてのアメリカ大陸が持つ意味を探ることから始め、17、18世紀の植民地時代の精神的背景、1776年の独立革命の与えた衝撃、19世紀アメリカ国家の空間的拡張が与えた精神的高揚等などを文学作品・政治文書・ジャーナルなどからたどる。その上で、20世紀アメリカをグローバルな視点から位置づけ、21世紀のアメリカの存在の意味と世界のあり方を検討したい。
 また、文学史という概念そのものに対する批評理論も紹介する。ことに、歴史と記憶との問題については、最近の精神医学の問題提起などを批評書から汲み取り、ことに歴史言説の特質についての考察を提示するつもりである。
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■授業の計画

前期: 15世紀ヨーロッパにおける新大陸の意味
     植民地時代のテクスト
     独立革命とアメリカ精神
     アメリカ文学の独立
     アメリカ・ルネサンス文学と精神
     南北戦争と文学
    「ヤング・アメリカ」と拡張主義
 後期: 19世紀後半の文学と文化
     自然主義文学
     世紀の変わり目の社会と文学      
     1920年代の文学と文化
     第二次世界大戦の歴史の概念
     ユダヤ系文学とユダヤ的想像力/創造力
     黒人文化と文学
     アメリカ的リアリズムの本質と21世紀社会

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■授業方法

講義が中心であるが、ビデオなどによって視聴覚的にアメリカ文化に触れていきたい。また、インターネットによる情報収集(ことに英語で)にも慣れてもらいたい。指定された批評書2冊のうち、一冊を購入して読み、レポートを提出のこと。初回の授業で2冊の本の概要については説明するので、興味のあるものを選ぶこと。
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■テキスト/参考文献

Peter B. High, An Outline of American Literature (Longman Eicho-sha)
『歴史とトラウマ:記憶と忘却のメカニズム』下河辺美知子(作品社)
『トラウマへの探求:証言の不可能性と可能性』キャシー・カルース(作品社)

 
 
A <通年>

■授業の概要

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■テキスト
 
 
演習 Ⅰ・ⅡI <通年>

■授業の概要

◆暴力と愛のレトリック◆「攻撃性とトラウマの関係性」
 他者にたいして暴力をふるうとき、それは憎しみからでたものであるとは限らない。愛を求めるあまりの攻撃性もある。精神分析の専門かによれば、テロリストになる人物の多くはトラウマ的経験をしており、自分が犠牲者であるという受動性を払拭するために、自分から外界にむけて攻撃するという。このゼミでは人間の中の攻撃性に焦点をあてながら、文学テクストにそれがどのように現れているかを考えていく。本年は、銃、テロリズム、核兵器といったテーマを扱った作品を読んでいく。
第二次大戦の激戦後、心の失調のため入院したサリンジャーは「バナナフィッシュにうってつけの日」で帰還兵シーモアの自殺の謎を書く。自らの頭に銃をあてた男の暴力性の本質をさぐる。
『デッドアイ・ディック』の中で、12歳のルディは何気なく撃った銃弾で妊婦を殺してしまう。若くして殺人者となった男の自伝には、生まれた町が中性子爆弾で破滅させられるという別の暴力も語られる。
マイケル・カニンガムの『星々の生まれるところ』の第二部「子供たちの十字軍」では、10歳でテロリストとなった少年とNY市警察の女性の緊迫した関係が描かれる。幼くして殺すことを教えられた少年と、彼を捕まえる任務にありながら少年と生きていくことを選ぶ女性精神科医は、9.11以降の世界で愛する人と共に死という暴力に対峙する。

***グループにわかれ、担当した部分について発表をします。声を出すことは勇気がいることですが、ゼミでの発言は“正しい答え”を期待されているわけではありません。自分で考えたことはどれも価値があるのです。思いを言葉にしてみるとそこに、思わぬレスポンス返ってくることがあります。***

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■テキスト/参考文献
J. D. Salinger, “A Perfect Day for Bananafish” Nine Stories (Littele, Brown and Company)
Michael Cunningham, “The Children’s Crusade” Specimen Days (Farrar,Straus & Giroux, 2005)
Kurt Vonnegut, Deadeye Dick ( Dell Publishing Co., Inc. 1982)
 
 
演習 Ⅰ・ⅡJ <通年>

■授業の概要

◆人種をめぐる視覚のレトリック◆
「青い眼の欲しい少女と見えない人生を生きる男」
 アメリカ文化はあらゆる種類の差異により構成されているが、中でも際立つのは人種(race)性差(gender)階級(class)の差異である。このゼミでは人種に焦点をあてながら黒人が書いた作品を読んでいく。本年は、男性作家、女性作家の書いた二つの作品をとりあげて、「視覚」というものがどのように人種意識に関係するかを考えていきたい。
 黒人が黒人であるのはどこで判定されるのか?それは、今も昔も視覚的な要素に大きくかかわっている。黒人は黒人として見られることによって黒人であることを意識する。一方、黒人は黒人として見られることによって、白人社会から無視される経験をする。視線を投げかける側、投げかけられる側の両面から、人種問題をときほぐしていきたい。
 『青い眼が欲しい』は、黒人女性として初のノーベル賞を受賞したトニ・モリソンの第一作である。11歳の少女ピコーラの肌の色は特に黒く、自分が人に愛されないのは醜いからだと思い込む。彼女は孤独の中で、世界一青い眼を持ちたいと神に祈るのだった。父親からのレイプで妊娠した子供は死産であった。狂気の中に自分の救いを求めるピコーラの姿に我々は愛の悲しさを見る。
 『見えない人間』は同時代の抵抗文学と異なり、人種意識を芸術的に表現した作品である。一人称の語り手「私」の遍歴が語られるが、彼は白人社会の黒人抑圧のシステムに巻き込まれていく。黒い肌という壁を身にまとった彼の姿を見るものはいない。暴動に巻き込まれた彼はマンホールに転落し地下の穴倉に潜行し、自分の過去を振り返る。

***グループにわかれて担当した部分について発表をします。声を出すことは勇気がいることですが、ゼミでの発言は“正しい答え”を期待されているわけではありません。自分で考えたことはどれも価値があるのです。思いを言葉にしてみると思わぬレスポンスが返ってくることがあります。***

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■テキスト/参考文献
Toni Morrison, The Bluest Eye (Vintage Book,1970)
Ralph Ellison, Invisible Man (Vintage Book,1952)

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